頭突き名人のゴン太は、無敵だった。頭突きをすれば必ず勝ち、頭突き名人の称号を誰にも渡さなかった。
ところが、ゴン太にも悩みがあった。自分の考える理想の頭突きができずに悩んでいたのだ。
しかし、ある日それはできた。
喜んだゴン太だったが、それは夢の中の話だった。
ゴン太は練習して夢を現実にした。
しかし、頭突き勝負には負けてしまった。美しすぎる理想の頭突きは先を読まれやすかったのだ。ゴン太は頭突き名人の名前を返上するしかなかった。
失意のどん底のゴン太はそこで目覚めた。それもまた、夢の続きに過ぎなかったのだ。
目覚めたゴン太は、まだ頭突き名人だったが、相変わらず理想の頭突きはできなかった。
(遠野秋彦・作 ©2014 TOHNO, Akihiko)